某地域包括支援センター職員のひとりごと

高齢者福祉に従事している社会福祉士の筆者が、様々なネタを書いていきます。30年近く、アマチュアですが音楽と関わっています。皆様のお役に立てれば幸いです。

キレる暴走老人

GWや連休は交通量増加や渋滞により、送迎が遅延してしまうことが一番の悩みです。

ご家族さまから「5分遅い!」などとご指摘をいただくこともしばしば…。

キレる家族も続出です。

 

社会問題化している「キレる老人」に対する私見と、私なりの考えや策を備忘録的にまとめました。

 

「キレる」という行為には前頭葉が大きく関わっていると日頃から考察しています。

前頭葉 - Wikipedia

一般的に認知症アルツハイマー認知症(以下ATD)が有名です。

ATDは「最近のことが覚えていられない(短期記憶障がい)」ということが大きな特徴です。

多くの専門家の皆様はATDの症状に「キレる」ということを挙げています。

私の経験ではATDと診断されているにも関わらず、短期記憶に問題がない「キレる老人」を見てきました。

 

事例

介護施設(デイサービス・通所介護)利用者・男性(要介護2)

入浴介助中、利用者が操作を誤って介護職員(女性)へお湯をかけてしまう。

利用者からあやまることはなく、不機嫌な表情を浮かべていた。

介護職員が気にも留めない姿勢でこのような冗談を言う。

「~さん、服がぬれちゃったから買ってもらおうかな~。」

介護職員の発言に激高した利用者、すかさずこう言い返す。

「利用者様にものをねだるとはけしからん。お前なんか介護を辞めてしまえ。」

介護職員のあわてて謝罪し、言葉の意図を説明する。

「すみません。冗談で言っただけです。~さんなら通じると思ったのに。」

利用者はその後、苦情という形で施設に申し入れ、数ヶ月間、そのことに執着し同様の苦情を繰り返してきた…。

 

介護施設(ショートステイ・短期入所)利用者・女性(要介護1)

迎えに行き、短期入所(ショートステイ・宿泊サービス)フロアに着いた瞬間、「私はこんなところにくる人間じゃない。」と激高。

もちろん家族が不在になるから利用したという経緯があり、事前に説明や下準備は行ってきました…。

彼女の主張は変化するどころか、エスカレートする一方。

「こんな寝たきりの中にいたら、こっちが参る。」

「ここは収容所か。」

などと周囲に大勢の他人がいるにも関わらず、大声でわめき散らしてしまう。

担当のケアマネジャーさんにその後を尋ねると、短期入所の悪口をずっと言い続けていたという。

二度と短期入所に来ることはなかったが、本人だけでなく、家族の生活もその後は破綻の一途を辿った…。

 

上記の事例でもプライバシー等の問題もあるため、氷山の一角ですが、キレる老人は身の回りに大勢います。

こちらには詳しく書けませんが、実際にはさらに困難な事例もありました。

性的亢進が強く、女性職員が前屈みなるなど、ちょっとしたきっかけで性的関係を迫る方。

夜間から朝にかけてひたすら誘惑し続け、想いが遂げられないと、殴る蹴るなどの暴力行為に走った事例もあります。

 

私はいつも前頭側頭型認知症(FT(L)D)および同疾患のピック病を疑ってかかります。

前頭側頭葉変性症 - Wikipedia 

ピック病 - Wikipedia

上記疾患の診断を受けた方には「理性」や「社会性」が衰えていることが多く見受けらました。

 

私の経験ですが「キレる老人」傾向がある方は

・高齢なのに自分で歩けたり、身体機能が維持されている。

・甘いものが好き(好きになった)。

・状況に関係なく、やたら明るく笑顔が絶えない、もしくはいつも怪訝そうな顔をしている。

・些細なことに対して「スイッチが入ったよう」に怒る。

・一つの行動に集中できない、座っていられない。

・同じ言葉をひたすら繰り返す。

・常同行動(手をひらひらさせる、身体を揺らす、顔をしかめる、手で何かを叩き続ける、奇声をあげる、いつも決まった服を着る、決まったものしか食べない)。

という共通項がありました。 

 

子育て中の私ですが、客観的に見ると2~3歳時の行動と似ているよう感じます。

業界用語で「二度童子(にどわらし)」という言葉がありますが、それに近い状態なのでしょう。

上手い言い回しだと思います。 

 

そこで私の取る対応の一例を紹介します。

 

・甘いものを食べてもらう。

上記疾患の患者には食行動異常というものがあり、それを逆手に取ります。

それまでは食べなかったのに、ボケが始まって、極端に甘いものが好きになったという方には効果的でした。

 

・話題をすりかえる・簡単な課題を与える。

目の前のことにこだわりだすと常同行動も相まって、なかなかこだわりの世界から抜けられません。

比較的、簡単な事例では、本人の訴えに傾聴した後、天候・気温・地域・過去の生活歴等の話題にすり替え、甘いカフェオレを提供し、落ち着いてもらったこともあります。

また「帰る。」と頑なに言い張る利用者に、本人の趣味であるカラオケを用意して落ち着いたケースもありました。

連続で20曲近く、熱唱したのち、疲労感も相まってその夜はぐっすりだったそうです…。

 

・安全を確保しつつ、落ち着くまで放置する。

最終的な選択肢はこれに尽きます。

キレる老人が適度な疲労を感じるか、スイッチが切れるまで、あきらめて見守ることも時には必要でした。

 

困っているどなたかの参考になれば幸いです。

 

やるせない日々のしめくくりとして、今夜も子供とイマージュ・アムールに癒され、眠りにつくことでしょう。

 

※あくまでも私見での経験談や統計・研究ですので、私が所属する法人や会のポリシーとは無関係な話です。